2011/10/13

夜行

夜行バスに乗るとワクワクする。
高速道路に入ると、バスが真っ暗になる。
運よく窓側の席になると、カーテンに頭を突っ込んで、
高速道路から夜景を見ながら、音楽を聴く。
通路側の時は、夜景は思い浮かべるだけになるが。
この時間が、たまらない。

頭の中を、いろんなことが行ったり来たりして、
知らない間に心地よく眠っている。

実家に帰る時に、父がいた頃は、
夜行バスを降りると必ず迎えに来てくれていた
朝早くて薄暗くても、夜でも、父の車は、
ピカピカしていてよく目立つ。

小学1年か2年の頃に、父の運転するトラックに乗って、
「小松」という所に行ったことがあった。
その時が生まれて初めて、夜行の車に乗った時だった。
鉄工所に務めていた父は、車の運転が得意で、
鉄鋼を運んで、トラックを運転していた。
大きなトラックが動くのが、すごいと思った事以外は、
途中で食べたラーメンがおいしかったことしか、
その時の記憶はない。

実家にいた頃、父と母と遠出をする時も、必ず車で夜出発だった。
リタイヤしてから、家でイライラ、ウロウロしている父を見かねて、
母が「車を買おう」と言いだし、うちに車がきた。
父がだいすきな、あずき色で玉虫のように光る軽ワゴン。
自分の自転車も、毎日磨いてピカピカにしていた父は、
毎日のように車をピカピカにして、本当の玉虫のようになっていた。
毎日磨くのは大変だろうから洗車に行ったら?と聞いたことがあった。
すると、「洗車をすると車が汚れるからイヤ。」と言っていた。
ピカピカの車で、誰かを送る、という用事を作っては走っていた。

父の生まれ故郷は東京で、法事があったりすると、
500kmの道のりを玉虫の軽自動車で、夜走った。
軽自動車でも、トラックと互角に高速道路を走っていた。

私はいつも助手席で、地図を持たされた。
助手席に乗る人は、車の修理と道案内ができなければいけない、
というのが父の持論で、
単純に前がよく見えるから助手席に乗りたかった私も、
助手席に乗るために、仕事を覚えなくてはいけなかった。

さすがに小学生に修理はさせなかったものの、
車のエンジンの仕組みや、工具の使い方、
四駆の活躍する道はどこか、軽自動車がいかに効率がいいかという話、
燃費のいい運転の仕方、雪が降った時の対処から、
高速道路での車間距離の取り方、標識の見方まで教わった。
というより、父が一方的に話してきた。

車を運転するには、こういうことを覚えておかないと、
自分が困る事になると、聞かされていたので、
18歳で自動車学校に行った時に、故障車を直せなくても、
車に乗ってもいいと聞いて安心した。
しかも兄に聞いたら、今はJAFがあるから大丈夫、
父の時代には自分で直すしかなかったらしいよ、と教えてくれた。

今も、夜行バスに乗ると、父のことを思い出すことが多い。
「バスに乗ったら運転手さんが見える位置に座って、よく見て運転を覚えなさい」
という父の教訓は無視して、カーテンに頭を突っ込んでいるが。

昔から車のことを聞いていた割には、私は運転が下手で、
誰かに運転してもらって乗る方が、断然すきだ。

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