私は小さい頃、父に頼まれて、よくタバコを買いに行った。
私が子どもの頃は、子どもでも自動販売機で買えたので、
「ハイライト、ハイライト、ハイライト」と、
呪文のように唱えて、自販機まで行った。
ドキドキしながらも、ちゃんと買って帰ってこられると、
大人になったように思って、清々しい気持だった。
生まれて初めて、一人で自販機で買ったものは、ハイライトだった。
父は、よくタバコを吸っていた。
私は部屋で寝転がりながら、タバコの煙を見るのが好きだった。
今思うと、雲の動きに似ている。
ゆらゆら漂って、左右に揺れて、ふわんと天井近くで消える。
父は黙ってタバコを吸っていて、
私は黙ってタバコの煙を見ていた。
煙を見ていると飽きなかった。
壁が黄色くなるのがタバコのせいだと知ったのは、
一人暮らしをするときに、物件を見ながら説明を聞いた時だった。
母は「あ~タバコが煙い」
「タバコ代で、豪邸が建つわ」
「肺がんになったら、お父ちゃんのせいやから」
などと、よく愚痴をこぼしていた。
父はハイライトから、JSP?JPSだったかな?
というタバコに、途中で銘柄を変え、
タバコを吸える年齢から、ずっと生涯、禁煙をしなかった。
一度入院した時にも、先生に「質問は?」と聞かれて、
「喫煙場所はどこですか?」と聞いていた。
かなり、きついタバコをずっと吸っていたけど、
最後まで、肺ガンにはならなかった。
「タバコを止めたら、死ぬ」と、ずっと言い続けていた。
心臓が悪くなった時も、
ニトログリセリンの頓服薬を、
タバコのビニールに挟んでいた。
そうすれば、持ち歩くのを忘れないから、と。
医者に「こうやって持ち歩いています」と、
ニコニコと、頓服を挟んだタバコを見せて、
医者が唖然としていた。
タバコは体に害があると、たばこの箱に書いている。
だが私は、どうしても、たばこが悪いものとは思えないでいる。
私の父も、私が子供のころ良くタバコを吸っていた。
返信削除タバコと言っても、きざみタバコ(という名で良かったかなですが)を吸っていました。
煙管を使うタイプ。
父がタバコを吸うと、子供の私はむせて咳き込んだ。
そのせいか、私はタバコを吸える年代になっても、タバコを吸ってみようと思うことはなかった。
今は、禁煙車の方が多いかも知れない。
愛煙家にとっては、受難な時代なのだろうが、私はタバコを吸う方の気持ちがまるで理解出来ない。
自分でタバコを吸わないでも、タバコの煙を吸い込んでしまう環境にいると肺癌になるリスクがあるという話を聞いたことがある。
本当かどうか分からないのだけれど。
「タバコは、吸いたい人が吸えば良い」と、単純に考えている。