自分の一番すきなことをしていい、これは、私にとってはすごく難しい。
幼稚園の頃、箱に入った折り紙のセットをもらったことがあった。
赤色が一番上に入っていて、わあ、きれいな色と思った。
もったいないから赤色は使わずに、
下に入っている他のきれいな色から少しずつ使っていた。
ある日、めずらしく幼稚園の友達が家に遊びに来た。
その折り紙のセットを出して、何色がすき?と聞いたら、
「赤がすき」と言ったか言わないかのうちに、
私が大切に残していた赤い折り紙だけを、ぱっぱと全部使って、
「他の遊びしよ」と言われた。
え、ええええ?と思った。
何かが衝撃的だったようで、今でも、その光景をよく覚えている。
私は、一番好きなものは、なかなか使えない。
かわいい紙石鹸も、ばんそうこうも、引き出しにしまって、
時々見るだけで、最後には、ボロボロになっていたし、
好きな色の色鉛筆も、残して、他の好きな色から使っていた。
赤は残しておいて、緑とか青をよく使った。
よく使っているもの、いつも持っているものの多くは、
自然と2番目にすきなものが多くなっているのだけど、
周りからみたら、1番すきに、みえるのかもしれないなと思う。
それを、一番すきなものを使えばいい、と言われると、
途端に、難しいなと感じてしまう。
一番大切なものは、汚れないようにしまっておいて、時々見るのがいい。
赤い折り紙を使われた日の夜、おそらく泣きやまない私に手を焼いた母は、
「赤い折り紙を買いに行こう」と、何度も言っていた気がする。
あ、そうか。
だから、はさみも、オルゴールも、ドライヤーも、
いっつも買ってきてくれるものは、どれもこれも赤色だったんだ。
親って、すごいな。
今思うと、私もその友達も、赤色の折り紙が好きなのは同じで、
私は使わずにみていたい、友達は使いたい、
その違いがはっきりしただけだった。
すきなものをたくさん使って、もっとほしいと駄々をこねる方が、
子どもらしくて、大人にはわかりやすかったのかもしれない。
もっと、すきな折り紙を使ったらいい、もっとすきな色鉛筆を使ったらいい、
もっとすきなノートを使ったらいい、と、よく言われたし、
今でも、肌触りのいいかわいいタオルを使えなかったりするけど、
私は見ているだけがいい。
もったいなくて使わないで持っていると、
きらいだった?と勘違いされることもあるけど、違う違う。
すきなことをしていい、は、私にとっては難しいけど、
したいことを選んでしていい、と言われたら、ワクワクする。
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