5月から、また学童で働き始めた。
何を言われても好き勝手なことをする子どもを見るのは、とても楽しいけど、
息苦しい時もある。
「宿題は自分でやらないと意味がないでしょ」
「砂場で裸足で遊ぶなんて危ないでしょ」
などと、当たり前のように言う大人がいる。
それを言われる子どもたちは、どう思っているんだろう?
私は、小学校の頃、あらゆる宿題を家族に手伝ってもらっていた。
漢字を書いたり、計算をしたり、日記を書いたりというのは、まあまあ好きだったけど、
読書感想文、工作関係は、本当に苦手だった。
宿題をしてないと学校に行けなくなってしまう性格を、母がわかってくれていたのもあり、
末っ子だったからか、みんな割と楽しそうに手伝ってくれた。
3日に1回、読書感想文を出さなければならなかった時は、
毎回母に感想文の下書きを描いてもらっていた。
母は、本を読むのが好きで、私が借りてくる本を喜んで読んでいた。
母とのルールがいくつかあった。
自分でも読めそうな本を見つけて借りてきて早めに母へ渡すこと、
はじめにと終わりにだけは自分で読むこと、
母が書いた下書きを読んで、意味のわからない所があれば省くこと、
夏休みの読書感想文の時だけは自分で全部読んで書くこと、など。
自由研究で本棚を作ることになった時は、設計図だけ書いた所で力尽き、
木工は苦手な母が、日曜大工の好きな父に協力を依頼してくれた。
父は、私が書いた設計図を見て、「これはすごい!」と言い、
これがあれば、その通りに作れると言い、
さっさと材料を集め、作り始めたらおもしろくなったのか、
見ている間に、どんどん本棚になっていって、
カンナまでかけて、とても小学生が作ったとは思えない、
すばらしい仕上がりにしてくれた。
母が、何も作ってないのは、やってないってばれるかもねぇと言い、
側面に彫刻刀で、何か絵を彫ったらどうだろうという話になって、
ネコの絵を彫ると決めて、彫った。
作ったものは、担任の先生が、出来栄えを金か銀か決める。
銀だったら、父ががっかりするな、とドキドキしていたら、
父が作った本棚は、「金」と判定がついた。
毎年夏には、アイデア貯金箱を作って出す宿題があって、
一度、姉が以前に作ったものを持って行ったこともあった。
作り方を聞かれたら困るので、姉に作り方の聞きとりだけした。
その時も、学校では、すばらしい出来栄え、と褒められた。
褒められながら、姉は手先が器用だからね、と思っていた。
そんなこんなで、宿題をクリアしていった。
すると、だんだん、自分でできることも増えてきて、
それほど手伝ってもらわなくてもできることも、少しずつ増えてきた。
ある時、もう、宿題は自分で全部しようと思ったことがあって、
自由研究で、自分の着られなくなった洋服を再利用して、
ぬいぐるみの服を作った。
自分ではアイデアも自分で考えて、すばらしいと思ったし、
何と言っても、誰にも手伝ってもらうことなく、一人で仕上げた。
これは絶対「金」がもらえるだろうと思っていたら、
なんと評価が「銀」だった。
ああ、人の評価なんて、いい加減なもんだな、と思った。
評価なんて、結局、ほんの一部しか見ないで、適当につけている。
私にとっては、小学校の自由研究で一番の力作は、ぬいぐるみの洋服なんだ。
自分で作ってはないけど、本棚の時も、読書感想文の時も、
その時の、父や母との会話も、楽しかった。
得体のしれない学校、という怪物に、みんなで一緒に立ち向かっている感じだった。
砂場を裸足で遊ぶな、と言われた子に、
私の小学校は、体育で校庭に出るときは、1年中いつでも裸足だったよ、
靴を履いて走りたいと、その時は思ってたけど、
そういえば、6年間で足を切って困ったことはなかったよ、
と言いたい。
大人が大きい声で言うことも、結局一つの見方でしかない、
と、思ってもらえたらいいな~と、心から思う。